生活保護を受給している世帯は「教育扶助金」が支給されるため、中学生までの公立の学費は基本的には無料です。
でも、もしかしたらあなたには「公立ではなく私立中学はどうなの?」「そもそも、私立はOKなの?」そして、「公立と私立ではそれぞれどのくらいの費用がかかり、どれくらいの違いがあるの?」などの疑問もあるのかと思います。
義務教育の中学校ですが、公立・私立ともに卒業するまでは親の金銭的な負担は少なくありません。あらかじめかかる費用を把握しておくことは子供のためにも重要ですね。
では、学費のから確認していきましょう。
生活保護受給時の中学校の学費のまとめ
まずは、学費の総額、そしてその内訳という流れで解説しています。
学習総額費
文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」によれば、保護者が1年間に中学生の子供一人あたりに支払った学習総額費は以下の通りとなっています。
区分 | 公立中学校 | 私立中学校 |
学習費総額 | 538,799円/年 | 1,436,353円/年 |
学習総額費の内訳
上の表の学習総額費には内訳があって、学校教育費、学校給食費、学校外活動費の3つに分類されます。
区分 | 公立中学校 | 私立中学校 |
学校教育費 | 132,349円/年 | 1,061,350円/年 |
学校給⾷費 | 37,670円/年 | 7,227円/年 |
学校外活動費 | 368,780円/年 | 367,776円/年 |
学習費総額(合計) | 538,799円/年 | 1,436,353円/年 |
私立は公立の3倍かかる!
公立中学校では、年間約538,799円がかかる一方、私立中学校では1,436,353円となり、約2.66倍もの差があります。
このように、中学生1人あたりの学習費について、公立中学校と私立中学校の比較を行うと親が負担する学費の差が明確になりますよね?
この差は、主に学校教育費の部分で生じるものです。
公立中学校では入学金や授業料が不要なのに対して、私立中学校が授業料や入学金などが高額であることが主な原因です。義務教育とはいえトータルではかなりの負担となることは確かですね。
生活保護の教育扶助金で支給される項目と金額
教育扶助(きょういくふじょ)は、生活保護制度の一部で、義務教育を受けるために必要な学用品などについて定められた基準額を支給する制度です。
生活保護受給世帯のうち給付の対象になるのは義務教育を受ける子供がいる場合です。
義務教育を受けるために必要な給付なので、支給されるのは「公立」の学費の範囲です。
また、教育扶助の給付金は一括で支給されるのではなく、項目と金額が定められています。。子供の学習のための費用なら何でも認められるというわけではないし、上限が設定されいるものもあるので注意が必要です。
※以下、令和3年4月時点の厚生労働省社会・援護局保護課の資料をもとに作成しています。
基準額
- 中学生:月額5,100円
学用品費(鉛筆、ノート、消しゴム、定規等)やその他の教育費(遠足、社会見学等)に充てるためのもの
教材代
- 実費支給
学校長又は教育委員会が正規の教材と指定するもの(副読本的図書、ワークブック、和洋辞典、楽器等)の購入費
学校給食費
- 実費支給
給食費に充てるための支給金で全額が実費で毎月支給
交通費
- 実費支給
支給される金額は、通学に必要な交通費を最も経済的な手段が基準
学習支援費(クラブ活動費)
- 実費支給 ※上限あり
中学生 上限 5万9,800円以内
また、このほかにも入学準備金や学級費、文部科学省の就学援助制度から修学旅行代が支給されます。
教育扶助を受ける際のアドバイス
上記で実費と書いてあるところは、請求書、領収書、レシートなどでの証明が必要です。
もらい忘れがないように、また、「これは教育扶助でまかなえるかな?」と疑問に思うことがあれば、購入前に、これから生活保護の申請をされる方はお住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当へ、すでに生活保護の受給をされているなら担当になっているケースワーカーさんに相談してみてください。
教育扶助の支給額や内容は見直しが行われます。
金額等は最新情報を確認することをおすすめします。
生活保護受給時に私立中学へは通えるのか?
さて、生活保護を受給している状況で、私立の中学校へ通えるのかという点に関してですが、一部の例外を除いて難しいように思います。
厚生労働省の生活保護問答集について(平成21年3月31日)厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡)【改正案】の中の「私立の小学校等又は中学校等」という部分を引用します。
2 私立学校については、原則として就学は認められない。したがって、現に私立学校に就学している児童が属する世帯から保護の申請があった場合は、公立学
生活保護問答集について(平成21年3月31日)厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡)【改正案】より
校への転校を指導されたい。
ただし、次のいずれかに該当する場合は引き続き就学を認めて差し支えない。
(1) 特待生制度(同様の制度であって名称の異なるものを含む)や経済的な理由による減免措置を講じている学校において、これらの制度を活用することにより授業料等が全額免除される場合であって、引き続き就学することが将来の自立に有効であると認められる場合。
(2) 年度途中等で転校が困難な場合(当該年度中に限る。)
なお、この場合の教育扶助の範囲は、教育扶助基準額、学習支援費、学校給食費及び教材代(学校給食費及び教材代にあっては児童の属する世帯の居住地を校区とする公立小学校等及び中学校等の基準を限度とする)である。
義務教育である公立の中学校では授業料がかからないのに対して、私立は高額な授業料がかかります。そのため「授業料等が全額免除される場合であって、引き続き就学することが将来の自立に有効であると認められる」という判断になっているのかもしれませんね。
まとめ
まとめると、中学校の学費には公立中学校と私立中学校の大きな差があります。
公立中学校では学習費総額が年間約538,799円であり、私立中学校では1,436,353円となります。生活保護を受給している場合、教育扶助として義務教育に必要な学用品費や教材代、学校給食費、交通費などが支給されます。
ただ、私立中学校への通学は一部の例外を除いて難しいですが、特待生制度や経済的な理由による減免措置がある場合や年度途中の転校が困難な場合には就学が認められることもありますよ。